先日、ある中3の女の子から質問を受けました。
「先生、ビートたけしになるにはどうしたら良いんですか?」
…え?ビートたけし?
漫才師か映画監督にあこがれているのかと思いきや、よくよく聞けば 「Bノートの作り方」 でした。
さて、うちの塾には昔から 「Bノート」 作成が義務付けられています。正式名称は特にありませんが、時には「間違えたところ集」と呼ぶこともありますし、ザックリ言うと「同じミスを二度としないための対策ノート」です。
ところがこのBノート、ただやみくもに書けばいいというわけではありません。上手に作れる子は、これ一冊でトントントントンひののにトンと成績が上がっていきます。
しかし、形だけ真似しても石破総理の支持率くらい上がりません。
少し分かりにくいので例を出してみます。例えば、こんな間違いがあったとしましょう。
✖ He play baseball.
○ He plays baseball.
初心者のBノートあるあるは赤ペンでsを書き足して、はい、終了。
大事なのは、「なぜ s をつけなければならなかったのか」「それになぜ気付かなかったのか」「気づきのきっかけとして何が見えていなかったのか」という原因を探ることです。
つまり、主語が「he」になった時点で「三単現かどうかをチェック!」という頭が足りなかったわけです。そうすると、Bノートに書くべきは:
「主語が三人称単数のときは、動詞に s がつくかをチェック」
これが上級者です。
私は普段5教科全部を教えていますが、英語・社会・理科のような暗記型(※理科の計算を除く)は、ある程度量をこなすことでどうにかなります。さらに、Bノート初心者のやり方でも何とかなることがありますが、国語と数学は話が別です。
たとえて言えば、ベルトコンベアの上に流れてくる商品は違っていても、運ぶコンベアはどれも同じです。ちょっと何言っているかわかんないですね。
この「共通するコンベア」を見つける力、つまり「抽象化する力」こそが、国語と数学を攻略するカギ。そしてそれこそが、Bノートの本質です。
中3の秋以降に、私立の入試問題などをやっていると、「なんでこんなとこに相似があるねん!気づくか!」という悲鳴が聞こえてきます。確かに円の中に隠れた相似は親の子に対する愛情くらい気付きにくいです。
でも、それは方べきの定理を見落としただけかもしれません。
だからこそ、「円の中で直線がクロスしていたら方べきの定理を疑え」と Bノートに言葉で書き残す。これが、Bノート上級者への道です。
Bノートは、言ってみれば 「自分との対話ノート」。「あーでもない、こーでもない」「ほんとにこれでええんか?」と、何度も自問自答しながら書くものです。
だから深く考える生徒ほどノートの中身が濃くなるし、浅く書けば浅田真央になります。
私はふだんBノートを見ながら、どれくらい抽象的な思考ができるようになっているか を見ています。中3でそれができるのは…塾生全体の2割くらいでしょうか。中2だと…今はほぼ全滅です。
しかし、今回、質問してくれた中3の女の子はそれに気づきかけているのかもしれません。
「これでいいのかな?」と思った時点で、もう 初心者卒業まぢかです。
地味な作業に見えるかもしれませんが、やっていくうちに必ず「コツ」が見えてきます。そしてそのうち、「抽象化しないと前に進みづらい」くらいになってきます。
たかがBノート、されどBノート。
少し意識を変えて、頑張ってみてください。



