先日の中1保護者会で「本を読むことの大切さ」をかなり強調してお伝えしましたが、その翌日にそれにまつわる「現代っ子の特徴」を如実に示す出来事をご紹介します。
授業後、何気なく中3の女子生徒と会話していた時のこと。「先生、うち、太宰治が推しやねん」と。
……太宰治が、推し???
失礼を百も承知で、あんなに陰キャを売りにして根暗作品で小説を書く人物が現代の中3女子に推されるなんて…昭和育ちの私はちょっと理解が追いつきませんでした。
しかし、よくよく聞いてみると、「文スト(文豪ストレイドッグス)」というアニメから入ったとのこと。どうやら文豪たちがイケメンキャラとなって異能バトルを繰り広げる、という現代的な作品らしいのです。
彼女はその世界観に惹かれ、『走れメロス』や『羅生門』を読み、今は『斜陽』を読書中とのこと。
羅生門の世界観や、人間の本質を問うあの物語のメッセージまで読み取れるかと言えば、さすがにそこはまだ難しかったようですが、文学に自発的に触れていること自体に感心していました。
子どもの頃に聞いた、つるの恩返しが「約束を守る大切さ」を伝える物語だと理解するように、その奥にあるメッセージを自分なりに感じ取ったときにさらにその面白さにのめり込んでいくのでしょう。
現代は「本との出会い方」が変わってきた
昔は「読書感想文のために仕方なく読む」だったものが、今や「推しキャラの原典を探して読む」へと変化しています。
入口はどこでもよく、子供たちの感性に合った形で入っていくのが大切な第一歩になるのだと改めて感じました。
というわけで、汗だくで探すの巻
せっかくなので彼女に紹介しようと思ったのが、塾のどこかにあったはずの「名作文学を10ページで読める漫画シリーズ」。25作品が1冊にまとまっている本で、これが3冊、合計75作品分のダイジェストが読める優れもの。

と、ここまでは良かったのですが、実はこの本、どこを探しても見当たらず。。。
捨ててしまった疑惑。最終的には2階の本棚から見つかるのですが、深夜に倉庫をごそごそ。可能性のある段ボールをすべて開封し、隅々までチェック。ゴキちゃんに怯えながら。。。結局見当たらずで、気づけば30分以上首にタオルを巻いて汗だくで発掘作業を行いました。
(2階の本棚の捜索を後回しにしてしまったのは、最初にこの女子生徒に「2階の本棚にあるはずやから探してみて」と探してもらったのですが「先生見当たりませんでした!」というので「だとしたら倉庫だな!」と倉庫の捜索に取り掛かったわけです。)
さて、このシリーズはあらすじを知るにはおすすめです。漫画で掴むことで「ちょっと面白そう」と思えますし、ファスト教養の時代を象徴する本です。
興味が振れたその先を伸ばす次の一手
生徒の誰もが最初から文学少年・少女なわけではありません。しかし、アニメやゲームをきっかけに「本って意外と面白い」と感じた瞬間に、それを引き上げる次の一手を用意しておきたいと思っています。もちろん、本に限らずですが。





