先日の進路面談で受験先が確定したが、今年はとにかく併願・専願問わず、奈良県立大附属高校の希望者が多い。塾生の半数近くが受験するが、きっと自塾に限った話ではないはず。加えて、今年は募集定員が40名減っている。
現在の県立大附属のレベルは併願で一条高校をちょっと下回る感じ。専願では生駒高校に届くか届かないかというレベル。これが昨年度までの状況なので、ここからもう一段上がると今年はハードな戦いが予測される。慎重な対策と準備が必要だ。
一般的な私立高校の出題レベル
通常このレベルの私立高校の入試問題を見れば分かるが、どの入試問題にも大した差はない。というか、差が出しにくい。
一般的に入試問題は、自校の特徴にマッチした生徒を選抜するので、選抜するのに最適な問題が出題される。一条高校に達さない子たちはまず標準的な問題を確実にクリアさせることが最重要となる。入学後、授業の質を担保するには標準的な問題が正確に解答できる学力を持つ生徒を欲するためだ。その結果、定期試験で350点以下の生徒が対象となる高校では、こういった標準レベルの特徴のない出題に偏りやすい。結果、学校間の差は入試問題には現れにくくなる。
生徒になんて迎合しない。お前が俺に合せろ!
しかし、県立大附属の問題はそれとは大きく異なる。むしろ、「お前はお前、俺は俺」。「受験生に合わせることなんてしない。欲しいと思う生徒を選抜してやる」という気概を感じる。
では具体的に英語の入試問題を例に見てみる。
難攻不落の敵に見えても、急所はある。
マークシート方式なので最悪の場合、鉛筆を転がせば何とかなると思っている子がいるかもしれない。しかしそれはとんだ誤解だ。そんな甘えを一気に打ち砕く。
昨年の大問2は4行から5行の英文を読み、そこにタイトルをつけるという問題だ。注がついているが、決して読み易くはない。これくらいの行数にもかかわらず、注が5~7個付く。
さらに、一文が長い。その理由は名詞に対する修飾語があちこちに埋め込まれているからだ。特に前置詞句の挿入が多い。この形に慣れていない受験生は読むのに苦労させられるはずだ。対策としては、主語の長い英文などをある程度暗記させ慣れさせておく必要がある。戻り読みをしていたら速度が落ちる。
最初の問題から鼻パンチを食らうが、攻略のコツはある。
例えばこの大問2はディスコースマーカーに注目すると解きやすくなる。中学生を指導する際にディスコースマーカーはあまり使わないが、大学受験ではよく聞かれる話だ。特に上位大学ではここを押さえて読む必要がある。
ディスコースマーカーとは話の転換を促す標識と思ってもらえれば良い。国語で言うところの「しかし、ところが、このように、つまり」など「論理展開を示す標識」とも言える。
今回の問題ではthoughやhoweverがそれに当たる。
出題者は「文脈の把握」に主眼を置いて出題したことが良くわかるし、当然意図的にこれらの言葉を文章に埋め込んだはずだ。
頭はこう動かせ!
次に、大問5のについてみる。
これは「各段落で述べられている内容として適切なものを選べ」という問題だった。言い換えれば「段落の要約文」を探す出題である。細かいところに目を向けるのではなく、この段落で一体何が言いたいのか、一言で言えば何なんだ。それを抜き取れば良い。
「論理構造の把握」「要約」が出題の狙いだと分かる。
テーマはSDGs
続いて、素材文について見てみよう。
今回の大問5では「2種類の藻類が人類のエネルギー問題への解決策として使用できる」ことを論じた内容であった。藻類を家畜の餌にして与えれば、CO2が削減できるであったり、藻類の体内にはトウモロコシよりも多量の油分が入っているので、技術的進歩があればその代替になるなど。一言で言えば「エネルギー問題」だ。
また、大問4では他の交通機関と比べ、自転車はエコであり、その利用を促すという趣旨の内容。これもやはり「環境」に付随する出題だ。
問題作成者、大学教授の頭の中にある「SDGsを背景とした素材」がプンプン匂う。
今までの入試問題にパンチ!
さらに面白いのが、文法問題など一切出題しない点である。「そんな細々としたことはどうでも良い。むしろ、全体の流れを把握し、要約し、言い換える能力を持った受験生カモーン!」。と言わんばかりである。
補足しておくが、文法を知らなくても良いという意味ではない。最低限の文法事項は押さえておいてほしい。しかし、have+p.p.がどうとかはどうでもよい。文法偏重型の入試問題に対するアンチテーゼを感じる。
今はまだ設立3年なので大きな実績が見られないが、地球全体を見ようとする視座と論理的思考のできる生徒を欲していることは、入試問題が物語っている。
ハードル高っ!
さてこういうことなので、受験生の学力レベルにしては求められる内容が高い。残り90日前後でそこにどうやって辿り着かせるのか。サッカー初心者にウルトラハイパージャンピングワニワニパニックキックを仕込むくらい難度が高い。トホホ。練習と教材作成あるのみ。。。