5月10日の中1の授業――教科書は最高の参考書であるという話

定期試験が近づいてきたので、中学1年生には「教科書の読み方」についてじっくりと話をしました。この少し後に行われる中間試験で良い点数を取るという目先の話ではなく、今後の中学校生活そのものを豊かにするという少し長めの視点での話です。即効性はありませんが、是非心に留めておいてもらいたいとの想いからお伝えしました。

実際に学校の教科書を持ってきてもらって一つ一つ確認していきました。

太字と細字の意味の違い。タイトルに込められた単元のテーマ、予習が必要な教科とその行い方。教科毎でのポイントの置き方の違い。用語集や巻末資料の活用法などを90分ほどかけて、丁寧に解説しました。

説明が終わりを迎えた頃に、ある生徒が「1ページ読むのにめっちゃ時間かかるやん」とつぶやきましたが、それこそが大切な感覚でした。

丁寧に読み進め、分からない言葉が出てきたら調べて書き込む。補足情報を足しながら、自分だけの教科書に育てていく。この過程がワークや問題集をスラスラ解くための本当の準備になります。赤シートで隠すとか、ノートにまとめるなどは方法論の一つであり、決してこれらが大切な訳ではありません。

教科書の巻末には、執筆者として「東京大学教授」などの名前が並んでいます。生徒たちは「ほんまや!東大教授の名前初めて見た!」と驚いていました。Goda塾の郷田毅の名前はどこにもないと笑っていましたが、それくらい教科書は、知識のプロたちが真剣に作った教材なのです。

既に記載されいる情報に加えて、辞書を使って意味や発音を調べる。教科書の訳に頼らず、自分で意味を確かめる。そんな地道なインプットの積み重ねが、結果的に「できるようになる」近道です。誰かに教えてもらうよりも、自分で理解しようとする姿勢と丁寧に文章を辿ることが学習効果を最大化します。

たとえば、最近中学校の理科の授業で池の水をすくって微生物を観察する実験があったそうです。ただ、見つけられたのは「ケンミジンコ」だけ。(本当はもっと居たと思いますが…)

でも教科書をよく読むと、微生物の採取には水をすくう以外にも3通りの方法が他に紹介されていました。そこまで読んでいれば、もう少し多くの種類を観察できたかもしれません。実際に子ども生徒たちは「ほんまや、他にも方法あったんや」とそれを見て納得していました。

今回の授業は、教科書の読み方というより、「教科書の偉大さのプレゼン」だったかもしれません。いろんな学年を見ていても、教科書を軽んじている子が非常に多い印象です。多くの子にとっては、教科書は「one of 教材」にすぎません。「king of 教材」として扱っている子はほとんどいません。定期試験前にまず手に取るのは、配布されたワークや演習プリント。つまり「ワーク>教科書」という認識が一般的なのです。

でも本来は逆です。大きな器に小さな器を重ねるように、まずは教科書で全体像と流れをしっかり把握してから、ワークで演習するべきでしょう。

もし「勉強の仕方がわからない」「頑張ってるのに点が伸びない」と感じている子がいれば、ぜひ一度、教科書を最初から最後まで、1行も漏らさずに隅々まで読んでみてください。分からない言葉には意味を書きこむ、疑問はメモする。そんな辿り方をすれば、確実に力がつきます。

ただし注意点があります。教科書を丁寧に読むには、想像以上に時間がかかります。試験2週間前からではきっと間に合いません。できれば3週間前には読み始め、試験範囲の内容は読み終えておきたいところです。

問題を解くのはアウトプット。これは大事な力ですが、それだけでは足りません。むしろそれ以上に、「良質なインプット」をどれだけ積み重ねられるかが、勉強の質(試験での得点)に大きく影響します。

教科書は、最高の参考書です。
そのことを、もう一度伝えたくて、この記事を書きました。

少しだけ駆け足で、しかし納得感のある勉強を続けて行きましょうね。