先生の娘は恐竜。待って、待って、まって。

実は先生の娘はね別な塾に通ってるんだよ。先生が教えてないのよ。

塾の先生の子が別な塾に通うって変だよね?

親子ってどうしても適切な距離が取れず、すぐに喧嘩になったりするからね。だから別な塾に通うことになったんだよ。もうかれこれ1年半くらい経つかな。

今までも色々とアドバイスをしてるんだけど、プライドが高くて全然親のアドバイスを聞かなくてね。過去教えてきた生徒の中で最も手強いよ。恐竜で言えば「ティラノサウルス」レベル。もう最強。

お父さんには勉強を見てもらいたくないから普段はお母さんに見てもらってるのね。

だけどね、母親がね「宿題をしなさい」と言えば癇癪を起こして大暴れするし、悪態なんて日常茶飯事。何様?という口調で母親を罵るわけ。

なんせ親のアドバイスが1mmも入らないんだから。

「本気でやる気あるの?」「塾やめる?」(塾の先生なので辞めても何の改善にもならずむしろ状況は悪化することは目に見えてるんだけど、本人の意思の強さを確認をするのよ。)みたいな話になるんだけど。「絶対に続ける」と言い張るのよ。だから、辞めさせられないわけ。(無理やり辞めさせて後から文句言われたらたまらないじゃない?)

やる気あるのか。と思って信じて見守るんだけどちょっと時間が経てばまた怠けるのよ。

私も一応塾の先生だから、他人の子供にはあーだこうだ言うけど、家ではお手上げですからね。格好つけてもこれがリアルなんだよ。あら、お恥ずかしい・・・

外面最強の小5女子って一番手に負えないんだよ。この時期。

だけどね、長く塾の先生やってるとね、小6に差し掛かるかちょっとすれば少しずつ落ち着いてくるのも知ってるのよ。

「あともう少しの辛抱、あともうちょっと耐えろ」と瀕死の妻に言って来たのよ。一番苦しいのって普段ティラノサウルスに噛まれる奥さんだからね。

そしたらさ、最近すこーしずつ落ち着いてきたのか。今まで言われたことをこっそりやりはじめたんだよ。

成長。まだまだ凶暴だけど、ティラノがコモドオオトカゲになった感じよ。

まだヤギは食べるけど。

そのアドバイスってのがね「難しい問題は解かなくていいから、基本問題を2周させなさい。テストで点数が取れなくても必ず週末にはもう一度復習しなさい。」これだけ。

たったの2つ。

「最近、あの子自分で宿題をやるようになって来て。今までは、早く宿題を終わらせたい。答えが合えばそれで良い。丁寧の文字なんて辞書になし。途中の理解なんてどこ吹く風。そんな態度が、「どうやったらこの答えに辿り着くのか、その「理由」を考えるようになってきた。」さっきもコピー機でテキストをコピーして自分で2周目やってた。」

そんな話を妻から聞いたんだよ。

きゃー!今まで蒔いてきた種が芽を出すのかな。

でね、何が伝えたいかって。

「その日が来ると信じて種を蒔き、待ちづづける」ってことよ。渦中にいるとね。本当にそんな日が来るのかって思うでしょ。もう無理だ!って思うでしょ。

待つのよ。じーっと待つしかないのよ。これ難しいよー。本当に。

自分の子なんだからどういう性格かも分かるしね。

「この子なら時期が来れば必ず自らの力でやれるようになる。」

そう信じられるから我慢して待つだけ。どんなに苦しくても。その日が来ると信じてね。

先生もね、この姿勢が続くなんて思ってないよ。必ず波があるからね。

今が良くてもきっとすぐまた悪くなるから。

だけどね、今まではゼロだったものが1になったのと、ゼロが続いているのとは違うのよ。

これはすごく大きな変化なんだよ。

ゼロから1の期間って異様に長いのよ。

ここでみんな耐えられなくなるのよ。だけどね、1回経験したら、次の1回って起こりやすくなるのよ。わかる?

あのコマ無し自転車に乗れていく瞬間。

それまで全然ダメでも突然タイヤが回りはじめてスイスイ進む瞬間。あれ。

こうなると点火までもうすぐだからね。

点火したらね家族全員で援護射撃よ。本人の気と親の気が交差する瞬間よ。

スパークよ。ここからが勝負。

だから、みんなも同じよ。1が来る日をずっと待ってるのよ。

手を変え品を変え、今までと違う何かが起こらないかって。ずっと観察してるのよ。その日を見逃さないために。

来るのが早い子もいれば、遅い子もいるよ。

だけどね、水を撒き続けてたら芽吹く瞬間が必ず来るからね。

その日が楽しみだよ。