Yちゃんと干渉について

ここ2週間は定期試験対策に忙殺されていて、更新頻度が落ちていたが今日から通常に戻るので少しずつ書いて行こうと思う。

今日は「干渉」に関して書いてみたい。

親が子を気にするのは当然である。
しかし、時に干渉は心の別居状態を生む。

三者懇談の度に、
お母さんの口から出てくるのはYちゃんの至らぬ点ばかり。
会話途中のお母さんの顔はニコニコしているが、
横で聞くYちゃんの首の角度はちびまる子ちゃんの野口さんかと思わせるほど。
もちろん、額には斜もかかっている。

三者懇談はバランスが重要なので、親が+であれば、私は-。
またその逆も然り。

Yちゃんの面談では私は+役を演じることが多かった。
母は何とかしたい一心で、普段聞き入れない娘に喝を入れるべく
日々の不満をぶつける。

ボクシングのリングの上で娘との打ち合い。
もちろんレフェリーは郷田。
しかし、この試合。

母の手には木刀。正論の殴打である。
ボクシングとは名ばかりの、リンチ現場である。

気の弱い子であれば、「私が悪かったです。もうしません。」

そんな言葉も出るだろうが、木刀を片手に殴りつける親の娘である。

ただじゃ済まさせない。
「このやろう、クソババァ。」
見えてくるのは反省ではなく、燃えたぎる怒りの感情。

お母さんには申し訳ないが、この状況を利用して発奮させるのが得策と考え。
「毎日塾に来い、先生と一緒にお母さんを見返そう。」
お母さんを敵役にした。できるだけ家にいる時間を少なくし、塾で勉強できる時間を増やすようにと声をかけた。

もともと、塾自体は好きな子だったので、これはうまくはまった。学校帰りに毎日勉強しに来た。2年生の中頃から急激に成績が落ち始め、目つきも悪くなっていたが。2年生の終わりには成績も少し持ち直していた。

時を置いて、
三年の夏。再び、相談事に「嘘をつく」というのが出た。
「先生、こんなこと仰いましたか?」と度々確認の問い合わせがあった。もちろん、言っていないことがそこには並ぶ。私の言葉を借りて言い逃れをしたことはすぐに察しがついた。
「まだ、打ち合いは続いていたのか。」収まったと思っていたが、そうじゃなかったみたいだ。
進路に関しても何も決まらない、「娘と大事な話ができない。学校見学に行こうともしない」というのがお母さんの悩みの種だった。

ある時、オンラインで質問を受けていた際、1時間程度の補習の間に2回。
部屋の扉が開く。そこには、お母さんの覗き見る顔。何度となく、お母さんには少し距離を置いて下さいとお伝えしていたが、普段見ることのできない、親子の関係が少し見えた気がした。

ここまで書くとお母さんが悪者のように聞こえてしまうが、実はそんなことはない。むしろ愛情たっぷりで、娘の性格やどうすれば喜ぶかまで熟知している。
受験校を決める際は、CIAも顔負けの情報収集力と分析力で我が子の合格判定を自分なりに算出し、賢明なサポートもされる。そこらの塾の先生よりも、学校にだって詳しい。娘の合格を知った瞬間誰よりも大きな声で「よっしゃー」と拳を振り上げ、タコ踊りをして喜んでくれたとYちゃんは後日嬉しそうに語ってくれた。

先を慮るあまり度を超えて押し付け、強制が出てしまうのである。強烈な愛は親を愛情たっぷりの鬼コーチにも、またストーカーへとも変化させる。

極端な例を書いたが、多かれ少なかれどの家庭にも当てはまることではないだろうか。

正論パンチは、「痛い」。
親の愛も、味方にすればアンプのように力が増幅されるが、
一歩間違えばゲインがかかり、一気に子供の心を歪ませる。

子供の度が過ぎれば、グーパンチを鼻っ柱に打ち込むのも良いが、それが毎回だと鼻の骨が折れてしまう。

気になる事があれば、一言伝えるだけ。あとはじっと耐えてもらいたい。距離の近い親からよりも、緊張感のある第三者を通じて伝える方が時に効き目があることも塾の先生は知っている。

炊飯器としゃもじの関係のように、塾と保護者がタッグを組み、受験という大波を越えられるよう、子どもにしっかりと飯を食わせるのはいかがだろうか。