本の紹介:『僕には鳥の言葉がわかる』鈴木俊貴。

最近ふと立ち寄った書店である一冊の本に目を奪われました。

タイトルは『僕には鳥の言葉がわかる』(鈴木俊貴・著)。その瞬間、ピンと来ました。

あの、中学1年生の国語教科書(光村図書)に掲載されている「言葉を持つ鳥シジュウカラ」の著者じゃないか。

教科書の方は、どちらかと言えば淡々と実験手順を明らかにした説明文。しかし、今回手に取ったこの本は、まったく違います。研究者のこれまでを振り返る自伝的エッセイ。とにかく面白くて、読み始めたら止まりませんでした。2、3時間で読めました。

特に「本が苦手」「読書が嫌い」と感じている子どもたちにとって、絶好の導入本になるのではないかと思います。

教科書の何百倍も面白く、読後は今まで何気なく聞いていた鳥のさえずりが、実は意味を持っているかもしれない。そう思いながら、鳥の声を聞いてしまっていました。巻末にはQRコードで鳥のさえずりが収録されており、文字だけでは伝わり切らない部分を上手く補完してくれていました。

料理の作り方が文字だけで書かれているとよく分かりませんが、そこに動画や音声があるだけでグッと分かりやすくなるあの感覚です。

私だけかもしれませんが普段小説といったものあまり読まないので登場人物を追いかけるのが非常に苦手です。今回もいろんな鳥の名前が出てきますし虫の名前も出てくるのでそれらを一つ一つ調べながら読んでいくと。で百科事典を見ながら動物学者が説明を加えてくれているような感覚になります。鳥に関しては鶏もも、鶏むね、手羽先くらいしか知らないので、私はこのような資料をネットでダウンロードして、書見台の上に置いて話を追いかけました。

https://youtu.be/_ihw0rV0jJE?si=eq21CvHlis7L6Z6f (解説!鳥の鳴き声図鑑より)

教科書では「シジュウカラどうしの警戒の合図」をシジュウカラの言葉として紹介されていましたが、本書ではそれを超え、なんと他のカラ類とも会話を交わしているという新たな発見が描かれていました。

著者である鈴木俊貴さんは、その発見を裏付けるための数々の実験を、専門用語や難しい数式を使わずに、誰でも理解できる言葉で丁寧に紹介しています。その分厳密に立証するには実験手順が大切になります。これを作中ではこれを「実験デザイン」と呼びます。その手法ですら開発しながらそして論文を通して一般化されていくのかと知ることが出来ます。

私自身、大学時代は理系の研究室に所属していた経験があるのですが、「研究」と聞くとつい小難しい理論や式を思い浮かべがちです。しかし、本書に描かれている研究者の姿勢は、まさに「素朴な疑問」と「好奇心」が出発点。目の前に研究の種が転がっていて、それを拾い集める姿に、「もっと肩ひじ張らずに取り組めば良かったんや」と安心させてくれます。学生時代にこの本と出合っていたかったですね。

ユーモアも忘れていません。たとえば元京大総長の山極先生が「もともとゴリラに似ていたから霊長類の研究に入ったのか、研究をしていくうちにゴリラに似て行ったのか…」というくだりでは、思わず吹き出してしまいました。実際に先生の顔を拝見したことがある者としては、その場面を想像するだけで笑ってしまいます。

まとめると、この本は「研究者の世界」を楽しく、そして子どもでも理解できる一冊です。新しい発見がどのように生まれ、社会の常識を変えて行くのか。その舞台裏を知ることで、学ぶことの面白さにきっと気づくはずです。

中学生は、試験が終わればぜひ手に取ってみてください。