私は日頃、教室で子どもたちに教科書の内容を伝える際、なるべく「教科」という枠を超えることを意識しています。
社会の授業をしている最中に英語の話が出てきたり、理科の内容が地理と結びついたり。そういう「予想外のつながり」が生まれたとき、生徒たちが前のめりになる姿を見るのが楽しいからです。
その瞬間こそが、勉強することの原点だと私は思っています。
たとえば、ナミビアに広がるナミブ砂漠。ここでは南からベンゲラ海流という冷たい海流が流れ、降水量を極端に少なくします。
この地理の知識を伝えるとき、私は冷たいドライヤーで地面に風を吹き続けるという例を使います。視覚的・感覚的な体験を通して、イメージを持たせるためです。
そして、英語の授業で登場するのが「stenocara beetle(キリアツメ)」。ナミブ砂漠に生息するこの昆虫は、朝霧を体に集めて水を得るという習性を持ちます。水蒸気量の少ない環境で、朝、砂の上に出てきて逆立ちをし、体についた霧を水滴へと変え、口元に誘導して水分補給を行うという生存戦略です。
上記の画像は公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会からの転載です。(https://www.jataff.or.jp/konchu/mushi/mushi93.htm)
(この内容は中学生版の速読英単語にも登場しますし、かつて奈良県の公立高校入試でも出題されました。)
地理で得た知識が英語の読解と結びつき、平面的だった情報が立体的に頭の中に浮かび上がります。こうした教科どうしの接続は、教科への興味を押し広げてくれます。
最近はYouTube、NHK for School、Google Earthといった映像が分かりやすさをさらに加速させているので授業で用いない手はありません。活字の羅列だけでは見えない世界が、「映像と現物」でぐっと身近なものに変えることができます。
もしかすると、生徒たちが体験しているのは「授業」ではなく、「一緒に食事をしている感覚」に近いかもしれません。
食事中の会話というのは、覚えようとして覚えるものではありません。ただ興味があるから聞く。次にどうなるのか知りたいから、話に耳を傾ける。その自然なやり取りの中で、言葉や内容が無理なく頭に残っていきます。
おそらく、食事中に「この話は絶対に覚えなきゃ」と思って会話を聞いている人はほとんどいないはずです。
それでも、食後になって話の内容を思い出せるのは、会話の中に関心と共感の2つがあったからです。授業も本来そうあるべきだと私は思います。
テストに出るから勉強するのではなく、知ることそのものが面白いから学ぶ。そうした姿勢が、いずれ知的好奇心を育てると信じています。
たくさんの寄り道が、いずれ太い幹を作り、大きな道につながっていく。こういった価値観の下、日々の授業を行っています。





